基礎系科目の攻略法
臨床系科目に比べて、苦手な人が圧倒的に多い基礎系科目。
理解するのに時間がかかるにも関わらず、科目ごとの配点は臨床系科目よりも少ないため、基礎系科目をどこまでやっておけばよいのか悩む受験生も数多くいるでしょう。
ここでは国家試験対策における「基礎系科目の攻略法」のキホンをご紹介します。
基礎系科目に時間をかけるほど、臨床系科目は伸びやすいのか
「ベーシックなところをしっかりやっておけば、臨床系科目の理解はより深いものになり、結局はそっちの方が近道なのでは」
こんな相談を受験生からいただくことがあります。
これは確かにそうなのです。理想をいえば、きちんと基礎系科目にも時間をかけ、十分な理解をした上で臨床系科目に移るべきです。
ただ、この「理想的な方法」で国試対策を進めたいのであれば、5年生またはそれ以前から対策をスタートするべきでしょう。6年生からのスタートであれば、基礎系科目に十分な時間をかける余裕はほとんど無いはずです。国試はやっぱり「タイムリミットに間に合わせること」が何よりも大切。現実的な落とし所を考えなくてはなりません。
基礎系科目の配点と得点目標
歯科医学総論(領域A)の配点
総論Ⅰ 保健・医療と健康増進 | 約21% | 衛生 |
総論Ⅱ 正常構造と機能、発生、成長、発達、加齢 | 約17% | 基礎(材料・薬理以外) |
総論Ⅲ 病因、病態 | 約9% | 基礎(材料・薬理以外) |
総論Ⅳ 主要症候 | 約4% | 臨床一般 |
総論Ⅴ 診察 | 約7% | 臨床一般 |
総論Ⅵ 検査 | 約13% | 放射一般 |
総論Ⅶ 治療 | 約16% | 麻酔一般、薬理 |
総論Ⅷ 歯科材料と歯科医療機器 | 約13% | 材料(理工) |
基礎系科目は領域Aつまり歯科医学総論で出題されます。
上記はH30歯科医師国家試験出題基準のブループリント(設計表)ですが、出題基準のタイトルだけみても受験生にはわかりにくいため「出題されるおおよその科目」を追加しました。
領域Aというと「基礎系科目ばかり」という印象を持っている受験生も多いでしょうが、実は違います。ざっくり言えば、領域Aの範囲は臨床系も含めた全科目です。基礎系に関しては、総論ⅡとⅢ、そして最後のⅧが該当します。
材料・薬理以外の基礎系が合計で26%、材料を含めても全部で39%と考えると、基礎系科目だけ完璧にしてもダメだということがわかるでしょう。単科目としてみれば、第1位は衛生21%、第2位は放射一般(臨実以外)と材料がそれぞれ13%なので、それらの科目でできる限り得点するほうが近道です。
基礎系科目の得点目標
基礎系科目は、領域Aでボーダーをクリアするための「攻めの科目」ではありません。
だったら基礎系科目はあんまりやらなくて良いのか?
そうも言えないのが国家試験対策の難しいところ。。。。衛生など攻めの科目で100%取ったとしても、基礎系科目での失点が多すぎたら、やっぱりボーダーには到達できません。
また領域Aとは別に必修でも基礎系の問題は出題されます。
さらに領域Bや領域Cの臨床系科目の問題でも内容的には基礎ということが度々あります。たとえば外科の切開線の問題。神経や血管の走行がわかっていれば正解できますから、解剖の問題とも言えます。
そんなわけで、基礎系科目もまるっきり放置というわけにはいきません。そして前述したように、やりすぎにも注意が必要です。まず、初期の段階では「受験生平均」を得点目標としましょう。衛生など「攻めの科目」は平均プラス10%の得点率、基礎など「守りの科目」は平均前後になるようバランスを見ながら調整してください。
攻めの科目が各領域ごとに、すべて平均プラス10〜20%得点できるようになったら、その次の段階として基礎系をさらに詰めてもかまいません。ただ、優先順位の間違いは不合格に直結しますので、詰めていく順番にはくれぐれも注意してください。
基礎系科目の具体的な進め方
過去問一周目は「把握」メイン
過去問題集に手をつけると、どの問題もしっかりと理解しなければ!と思いがちですが、基礎系科目の一周目は「理解」以前の「把握」のためと割り切りましょう。
問題を解きながら、それぞれの科目で出題されている内容をざっくり把握し、理解に時間がかかりそうなところは付箋などつけてマーキングだけしておき、どんどん進めます。何日もかけて進めていくと、全体像が捉えにくいので、可能であれば1科目あたり1〜2日くらいでまとめて学習することをオススメします。
解剖と材料はガッツリと
基礎系科目の中で、ちょっと例外になってくるのが解剖と材料です。
臨床系科目を勉強するときに、解剖や材料の知識は必要になる場面がとても多いことは皆さん実感しているでしょう。この2科目は基礎系科目の中でも特別扱いしてください。時間をかけてしっかりやっても、必ずリターンがあります。また材料については、領域A対策の得点源でもあります。
基礎単独ではなく臨床科目とリンクさせる
歯科医師国家試験は「研究者を選抜するための試験」ではありません。
近年、より顕著になってきていますが、基礎系科目の問題も「いかにも基礎」という内容より、臨床につながる内容が多く出題されるようになっています。
そこでオススメしたいのが「基礎単独」ではなく「臨床系科目から基礎系科目につなげる」学習法です。
そもそも「基礎単独」で勉強していても、その知識の使い所がわからないと「何のためにこれ必要なのかなー」とモチベーションも下がりがちですよね。でも基礎と臨床のつながりが見えてくると、それぞれの理解度は一気に高まります。
基礎系の過去問一周目が終わり、臨床系の学習に入ったら、チャンスがあるたびに基礎を見直して下さい。
たとえば歯周外科の再生療法。歯周組織の発生の知識が必須となりますので、基礎系の発生で「歯周組織の発生」をしっかり見直してみましょう。
たとえば全部床義歯の設計。そこで出てきた解剖学的なランドマークを解剖の教科書など併用して確認しておきます。
修復治療なら、材料が出てくるたびに、材料の教科書などで組成なども含めて見直します。
こんなふうに、臨床をベースに基礎を「つまみ食い」していくと、基礎の出どころ、つまり臨床とつながる知識を優先的に学習することができます。さらに、そのつながりがしっかりすれば臨床科目の理解もよりより進むということで、良いことづくしです!
臨床系科目の学習を基礎系科目とリンクさせながら進め、これが一通り終わったら、基礎系過去問二周目に入ってみてください。基礎系で押さえなければいけないポイントがはっきりわかるはずです。
本当はすべて大切なことだけど
大学で学ぶことは本当はすべて大切です。
受験生の皆さんもわかっていると思いますが、臨床の発展のためには基礎系の研究は不可欠であり、臨床の道に進むとしても基礎系をはじめ全ての研究者の方々には敬意をはらうべきです。ここで述べたのはあくまでも「歯科医師国家試験対策における基礎系科目の取り扱い」であること、誤解がないようお願いします。
基礎系科目は過去問題集の前半にあるため(必修の次が基礎ですね)、そこで時間を取られすぎて、さらに次の衛生でいっぱいいっぱい、、、臨床系科目が間に合わない!という失敗パターンは特に現役生では定番です。9月にスタートする全国模試までに一通りの準備をすることを考えて、きちんと逆算していきましょう。
あわせて「攻めの科目」と「守りの科目」も意識して、限られた時間で最大限の効果をあげていきましょうね!!