国公立学生さんのリスク
国公立大学の歯科医師国家試験合格率は高いものの、総合(新卒および既卒)で大学別の合格率が90%を越えることはなかなかありません。また国公立の学生さんは既卒になった場合、非常に長期化することがあります。前回114回歯科国試では国公立の12大学のうち、既卒合格率が50%以下の大学が7大学。半数以上が厳しい結果に終わっています。
国公立大学の学生さん全員に当てはまるわけではありませんが、万が一を避けるために失敗する学生さんの傾向を知り、自分にそういった部分が無いか確認してくださいね。
効率を求めすぎる
まず国公立大学の学生さんはすでに大学受験というハードルを越えてきています。そのため、受験技術は十分に身についており、これ自体は歯科国試においても非常に大きな武器となります。
一方で受験に秀でているからこそ「最低限の努力でハイパフォーマンス」を求めすぎてしまう傾向が一部にあります。
模試でも本番の点数でもそうですが、国公立大学学生さんの得点は分布が非常にせまく、ボーダーよりやや上にぎゅっと全員が集まっています。これが私立の場合にはボーダーよりかなり高い点数から低い点数まで広い分布となるのが一般的です。
もうわかりますね。つまりボーダーが少しあがったら、一気に不合格者が増加します。
確かにボーダーぎりぎりでも越えてしまえば合格。ですが、そこに対する努力を惜しむ意味はありません。大学受験とは違い、歯科国試対策で学ぶことは今後の歯科医師人生に直結することです。「ぎりぎり」なんて言わず、「思いっきり」高みを目指していきましょう。
考えてなんとかしようとしすぎる
現在の国試には「暗記力」と「思考力」が必要となりますが、考えるのが上手な学生さんは(国公立に限らずですが)暗記少なめでも工夫してなんとか正解にたどり着くことができたりします。これも悪いことではありません。本番ではどんな方法でも正解するのが正義。大きな強みとなります。
一方で、必修や一般問題ではまだまだ「覚えていなかったら終了」という問題も少なくありません。
思考力があるがゆえに、暗記をおろそかにしすぎて、必修で失敗というのは、国公立大学の学生さんではわりと定番です。せっかっくの能力が裏目にでるのは、あまりにももったいないこと。スマートに問題を解くのも楽しいですが、地味だけどコツコツ覚えることも忘れないようにしてください。
学年全体での連携が弱い
国公立大学の学生さんは合理的ゆえに個人主義になることも多く、学年の連携も私立に比べるとかなり弱めです。個人の生き方なので、そこに口をはさむのはどうかと思いますが、国試対策においてはやはりリスクのひとつとなります。
まず、現在の合格基準のほとんどは相対基準。他の受験生が何を勉強しているのかが大きなポイントとなります。国公立大学の既卒で長年はまっている人は「勉強はすごくしているのに、その内容がずれている」ことが非常に多く、話を聞くと友人との連絡も一切絶ち、ストイックに一人で勉強してきたというケースが目立ちます。
学年全体でなくとも、10人程度のグループを作り、情報交換していくことは心がけましょう。
また集団の推進力はあなどれません。人は否応なしに環境の影響を受けますので、「皆で合格しよう」という雰囲気ができれば、自分も含めて全体のパフォーマンスは大きく向上します。成績がそこそこ上位の人はぜひ成績が振るわないお友だちに勉強を教えてあげてください。「教えること」は自分自身の実力も大きく伸ばします。
大学講義は国試向けでないことが多い
教室によるとは思いますが、教科書レベルを越えた最先端の内容が多く取り扱われる講義も少なからずあると思います。これは一概に悪いこととも言えません。大学受験を越えてきているのであれば、「読む力」は皆さん持っていらっしゃるでしょうし、教科書は自分で読んで基本的な知識を身につけ、さらに講義で最先端の内容を理解すれば、ある意味最強です。
とはいえ、教科書自体を持っていないという学生さんもまぁまぁいるでしょうし(正直いって、私も学生時代、全科目の教科書は持っていませんでした)、自律的に基本的な部分を補完する必要があると気づけ無いことも多いでしょう。大学の中にいたら、大学で教わることが当たり前と思ってしまうのは無理もありません。
ただ、歯科医師国家試験で出題されるのは「最先端」ではなく「ある程度コンセンサスが取れている」こと。つまりは教科書レベルの基本的な知識が最重要となります。自身で購入しなくても大学の図書館には教科書も数種類あるでしょうし、先にも述べたように「読むことは得意」な人も多いでしょうから、ぜひそれらを活用してください。
就職対策としても
勤務医を募集する先生からたまに耳にします。
「国公立出身の先生は確かに頭は回るんだけど、たまにびっくりするような基本的知識が抜けてるんだよね」
これは私自身も実感するところ。これまで多くの若手の先生の面接にあたり、入職後の指導もしてきましたが、わりと国公立出身者はハイリスクハイリターン。一方で私立出身の先生方は細やかに教育されてきたことを感じることが多々あります。
そして私自身も正直言ってその一人でした。まだ歯科国試が今ほど厳しく無かったため、普通に受験して、普通に合格しましたが、今振り返ると「あんなに何も知らない状態で受験したなんて、、、」と恐ろしくなるレベル。私が今持っている知識のほとんどは卒後に身に着けたものです。
基本的な知識にしても、他の人との連携にしても、歯科医師としてやっていくなら必要なもの。
歯科医師国家試験だけでなく、その後の人生を左右すると言っても過言では無いため、早いうちから意識して改善していきましょう。