歯科国試合格に必要なこと
国試で「確実な合格」を目指そうとするなら、必要なことが6つあります。人により得意なこと、苦手なことはバラバラですので、まずは自分がそれぞれどの程度できるのか把握するところからはじめましょう。
一つひとつについて自己分析し、計画を考えるには、かなりの時間がかかると思います。数日間に渡るかもしれません。でも、動き出す前にじっくり考えておかないと、結局はムダな回り道をすることになりますので、ここは腰を据えて取り組んでください。
理解
学習をすすめる上で内容の理解は必須です。言葉を知っているだけでは太刀打ちできない問題も数多くあります。これまでの定期試験を、どちらかというと暗記で乗り切ってきた人は、ここの底上げが必要です。
「理解」のための方法
教科書・参考書
最も一般的な方法です。わからないことを調べたり、通しで読んで全体の構成をつかんだり、書籍を使って理解を深めます。得意科目(自分と相性が良い科目)に関しては、これで十分に理解を深められるでしょう。
講義
苦手な科目に関しては、WEB講義などを使うのも一つの方法です。商品としてのWEB講義は理解しやすいような工夫が盛り込まれているため、自分の力だけでは理解しきれなかった部分も効率的に習得することができます。
個別指導
集団にあわせた講義より、自分ひとりに対する個別指導はさらに学習効率を上げることが可能です。ただし料金的には高額なため、必要があれば科目や分野をしぼって利用するのがおすすめです。
大学の先生への質問
どの程度、対応してくださるかは大学によって、また先生によっても異なるでしょうが、学生からの質問などを気軽に受けてくれる先生がいれば、積極的に質問してみましょう。
「理解」に対する自己評価
さて、ここで一度「自分は理解が得意なのか?理解が難しい教科や分野はどこなのか?それをクリアするにはどのような方法が必要なのか?」考えてみましょう。もし「理解そのもの」が苦手なのであれば、そこに必要な時間もあらかじめ予定に入れなくてはなりません。
「きちんと理解できているか」わからない場合は、勉強したことを「カンタンに説明できるか」試してみましょう。もし単語の羅列になってしまうようなら、知識がまだまだつながっていないということ。言葉を知っているだけでなく、具体的な説明ができることを目指しましょう。
また、極端に理解することが苦手なら、お金がかかっても個別指導なども検討すべきかもしれません。その場合は、親御さんへの相談も必要になってきます。逆に「自分がすごく苦手な科目」があるけれど、大学にとてもわかりやすい説明をしてくれる、その科目の先生がいれば、プラスアルファの予算は必要ないということになります。
暗記
一般問題、必修問題を攻略するためには、正確な暗記も必要です。また思考力が問われる問題であっても、思考のベースになるのは正確な知識です。考える力がある人にとっては意外な盲点になりがちですが、今の国家試験は「暗記」と「理解」が両輪となります。暗記が甘いと解答にも時間がかかり、十分な見直しができないというリスクも生じますので、暗記対策についても考えておきましょう。
「暗記」のための方法と自己評価
現在のところ、暗記に特化した教材は販売されていません。受験生それぞれが工夫して暗記に取り組んでいます。書いて覚える、何度も読む、口に出して言ってみる、チェックペンを使う、さまざまなやり方がありますが、ここで確認してほしいのが「自分の暗記方法が確立されているかどうか」です。
何か覚えようとしたときに「自分のやり方」がすでに決まっていて、さらに「暗記に必要な時間」の目安がつくなら完璧です。(たとえば1枚の資料を渡されたときに「この分量なら1時間あれば覚えられるな」という感じに)
逆に自分の定番が決まっていない場合は、早期にいろいろと試し、まずは「自分にとっての暗記方法」を確立する必要があります。試行錯誤にかかる時間も計画にいれておきましょう。方法が決まらないと、その後の学習効果にも大きな影響を与えますので、「いつまでにやり方を決める」という締切も設定しておきましょう。
練習
学習内容を理解し、暗記したら、次は練習です。自分が習得した知識の「使い方」を練習していきましょう。その中で間違えて理解していた部分や覚えたつもりだったけれど忘れかけている知識も改善していきます。
「練習」のための方法
過去問題集
国試対策の練習ツールとしては最も一般的です。過去の出題内容を把握することは、学習計画にも必要ですので、受験期には日常的にずっと使用していくツールとなります。
模擬試験
解答する際の時間配分などは模擬試験でしか練習できません。全国試験である国試対策にはとても重要な練習ツールですが、回数は限られているため、一回一回を大切に使いましょう。
オリジナル問題
過去問題集と模擬試験は全受験生が使うものですので選択の余地はありません。もしも、さらに練習が必要であれば予備校の既卒生コースやWEB講座などで提供されるオリジナル問題を使いましょう。
「練習」に対する自己評価
練習では「量」と「質」のバランスがとても大切です。
たとえば過去問題集を1周しただけでは、量として不十分でしょう。一方、何十回もまわしているのに、点数が上がらないなら「質」つまりは使い方を考え直す必要があります。まずは自分が予定している「量」と、いつもやっている「質」を評価してみてください。
量に関してですが、過去問題集は最低でも過去10年分を3周を目安としてください。また模擬試験は、国試の傾向をつかむところからスタートする現役生は麻布とDESの公開模試を3回ずつの計6回、既卒生も予備校に所属しないのであれば同じ計6回をおすすめします。一年コースで予備校に所属する既卒生であれば、日々の講義の中でオリジナル問題を解いていくため、所属する予備校の模試3回のみでも良いと思います。
「質」については自己評価が難しいでしょうから、まずは「量」をクリアするのも一つの方法です。何度も問題を解いているのに点数が上がらない場合は、あらためて「問題練習の方法」を見直しましょう。
管理
どんなに時間を使って一生懸命勉強しても、そこで得た「理解」や「暗記」を忘れてしまっては何の意味もありません。定期試験と大きく違い、国試は「幅広い分野の膨大な内容」を「長期間に渡って維持する」ことが必須です。
「わかった!」だけでは足りない。
「覚えた!」だけでは足りない。
せっかく得たその知識をきちんとキープするための管理をきちんと計画にいれておきましょう。
実は多くの受験生にとって、ここが大きな盲点になっています。特に浪人を繰り返す人は、必ずと言ってよいほど「管理のための方法」を考えていません。せっかく勉強したのに、それをどんどん忘れていき、ほぼ忘れかけたところでまた時間をかけて思い出したり覚え直すのは時間のムダですし、何よりももったいないことです。
また、規則正しい生活を送ったり、毎日一定時間を勉強するといった、生活全般の管理も成績の伸びに大きな影響をもたらします。この点についても、どのように実現していくか考えておきましょう。
「管理」のための方法
既習事項の定期的な見直し
問題を解くことで、忘れかけている部分の見直しをするのが一般的ですが、それだと「たまたま問題で聞かれなかったこと」が穴になります。月に一度は、それまでに勉強したことを全体的に振り返っておきましょう。
見直すものは
あれこれ教材を使用していると、それを全部見直すだけの時間がとれません。自分の「これまで」をできるだけ短時間で振り返れるように基地はひとつにまとめておきましょう。
見直すペース
実は、それぞれの科目で見直しに必要な回数は一人ひとり異なります。相性が良い科目って忘れにくいですよね。一方、嫌いな科目はあっという間に忘れます。ですので、まずは全科目、月に一度は見直しをするところからスタートして、徐々に自分にあわせて間隔を調整してみましょう。試してみないことには、自分の最強パターンはわかりませんので、スケジュールに組み込むところから始めてください。
個別指導
管理が極端に苦手で、予算的に可能であれば、ペースメーカーを個別指導に丸投げしてしまうのも一つの方法です。予算的に難しければ、大学でそういった世話を焼いてくれる優しい先生を探してみましょう。「自分の力だけで合格する」ことは確かに素晴らしいことですが、それよりも「人の手を借りてでも確実に合格する」ことの方が大切です。
人との約束
生活全般については、一人で何とかするよりも人を巻き込む方が成功率はあがります。たとえば、朝なかなか起きられない場合は、友達と約束して朝イチ勉強会をするとか、ご家族にモーニングコールを入れてもらうとか。提案するにはちょと勇気がいると思いますが、それを言い出す覚悟が大切。自ら少し強制力を働かせると、成功率はぐっとあがります。
「管理」に対する自己評価
ついつい忘れがちな「知識の管理」と「生活管理」。一度計画を立ててしまえばコツコツと実行できる。そういうタイプなら、問題なく進めていけるでしょう。逆にそれが難しいタイプなら、何かしらの手を打たなければいけません。自分のタイプってそう簡単には変わらないので、何かしらの仕組みが必要です。努力や気合だけでなんとかしようとするのは危ういので、きちんと「続ける方法」を検討してくださいね。
分析
自分の進行状況を客観的に把握し、今後の課題を明確にするためには「分析」が必要です。順調に学習が進んでいるように見えても、気づかぬところにリスクが隠れているかもしれません。逆に時間をかけているのに点数が伸びない場合は、その原因がどこにあるのか「分析」する必要があります。
「分析」のための方法
模擬試験
数値データをもとにした分析ということであれば、模試一択となります。ただ、歯学部は理系とはいえ理工学部などに比べて統計処理を必要とするレポートなどは少なく、数字を読み解くことに慣れていない学生さんも珍しくありません。全国成績表で偏差値などの意味があまりわからない場合は、大学の先生に相談したり、WEB学習相談をご利用ください。
大学の先生への相談やWEB学習相談
模擬試験のデータをもとにした分析は非常に精度が高くなりますが、難点は秋以降しか使えないこと。特に第三回の公開模試は成績表が出るのが1月になりますので、分析しても改善するための時間があまり取れない場合もあります。
たとえば春から夏にかけて、対策は進めているけれど、特定の科目で行き詰まりを感じたら、一人で抱え込まずに専門家の分析を検討してみてください。早め早めの行動が未来の自分を助けます。
「分析」に対する自己評価
相対評価を正しく理解することや、成績表の分析など、国試対策には「数字に対する強さ」が欠かせません。自分は数字に強いのか、弱いのか?もし弱いなら、どうやってその部分を補完するのか?しっかりと考えておきましょう。
改善
対策をスタートしたときの勉強法そのままで、最後まで到達できる人はいません。勉強して、分析して、改善しての繰り返し、つまりはPDCAサイクルが必須です。
※PDCAサイクルについては↓こちらをご覧ください
改善において大切なのは「スピード」と「方向性」です。
まずはスピード。思うように結果が出ない場合、なんとなくそのまま放置してしまうのと、すぐに課題を明確にして改善していくのでは、その後の伸びに大きな差ができます。勉強が得意な人は、日々の学習の中でも何回も課題抽出と改善を繰り返しています。
改善の方向性が明確な場合、たとえばある科目の勉強時間が足りなかったとか、理解が不十分な分野があったりとか、そんなケースならそこをすぐに改善して実行するのみです。ただ課題があることはわかっているけれど改善の方向性がわからないケースも少なくありません。そんな場合にどうするのか、あらかじめ考えておきましょう。
「改善」のための方法
日々の学習の確認
過去問題集を何回解いても成績が伸びない人、一日にかなり長い時間勉強しているのに点数につながらない人、もしかしたら勉強中に「自分の課題を見つけて一つでも多く改善するんだ」という意識が不足しているのかもしれません。まずは形だけの勉強になっていないか確認してみてください。
分析から改善に
最も一般的な流れです。模試や専門家のアドバイスを改善につなげていきましょう。
改善から管理に
分析、改善をしても、それが続かなくては効果は出ません。改善したことを継続していくための管理も忘れずに。
「改善」に対する自己評価
問題が生じたときに、すぐに原因を考え、改善に取り組めるタイプなのか、それとも問題があることに気づいても何となく惰性でそのままにしてしまうタイプなのか、自分の性格を振り返ってみましょう。「改善」の上手さは勉強の良い循環をもたらします。逆にここが弱いと、手間をかけている割には結果が出ないという最悪のパターンにはまってしまう可能性もあるため、注意が必要です。
全方位で対策を考える
さて、まとめましょう。一度書き出してみてください。
【自己評価】
理解:( )点/5点
暗記:( )点/5点
練習:( )点/5点
管理:( )点/5点
分析:( )点/5点
改善:( )点/5点
点数の基準ですが、自分の周囲を考えて「合格する層の平均を3点」としましょう。たとえば学年に100人いて、そのうち6割が毎年国試に合格しているなら、学年30位くらいの人が標準的とイメージしてください。数字を出す過程において、自分の特徴をしっかり考えることが目的なので迷う場合は直感的に決めても構いません。「すごく得意」「ほんとに苦手」という確信がなければ、ハテナ付きにしておいて、対策の過程において再チェックしてみましょう。
自分を知ることは伸びしろを探すこと
自分の弱点はどこでしょう?それを補強する方法は何を選択しますか?
対策に必要な6つの項目は、個人によって、また環境によって、取り組みの難易度が大きく異なります。受験生により千差万別なので、「自分にとって必要なこと」をきちんと考えましょう。
特に注意してほしいのが後半の3項目(管理・分析・改善)です。前半の3項目(理解・暗記・練習)についてはしっかり考えている受験生が多いのですが、ここをきちんと完成させるためには「管理・分析・改善」が欠かせません。効率的に点数を伸ばすために、また思わぬリスクを積み残さないために、すべての項目において漏れがないようにしてください。
自分の弱点を見つめ直すことは楽しいことでは無いかもしれませんが、逆に「弱点=伸びしろ」です。自分のさらなる可能性を探すんだと思ってください。客観的な意見があった方がより正確な自己評価ができますので、可能であれば家族やお友達、大学の先生など「これまでの自分をよく知っている人」に意見を求めてみてください。
人を頼ることも必要
また国試対策は「期限内に結果を出す」ことが何よりも大切です。先にもふれましたが、自分ひとりで何とかすることより、誰かの力を借りてでも成功率をあげることが重要。目的を果たすために誰かに協力を求めることは甘えでもなんでもありません。ストイックになりすぎず、大学の先生や友人、家族に頼れるところは頼りましょう。
自分の弱みと対策の予算
さらにこの6つの項目について自己評価ができると、受験期に必要な予算も決まってきます。たとえば書籍だけでは理解できなそうな科目があれば、WEB講義を受けるための費用が必要となります。とはいえ、何でもかんでも購入すればよいというものではありません。ムダなお金を使わないためにも、自己評価をしっかり行い「自分にとって本当に必要なこと」と「時間短縮に必要な経費」を考えましょう。
既卒生の場合には、予備校によってこれらの項目への対策もさまざまですので、予備校を選ぶ際の基準にしてください。自分の弱点をきちんと補ってくれるところを選択しましょう。