歯科国試の難易度ってなんだろう

問題がカンタンな方がよい?

多くの受験生は「本番でカンタンな問題が出るといいなぁ」と思うでしょう。

下手すると大学の先生でさえ、私が「問題難易度下がりすぎないといいですね」というと、ギョッとされることもたまにあり、「不合格者が多い方が予備校は儲かりますもんね」みたいなあらぬ誤解を招いたこともありました。

定期試験による絶対評価の呪いだと思うのですが、たしかに「60%以上は合格」みたいな絶対評価であれば、問題はカンタンな方が良いに決まっています。でも、歯科国試はほぼほぼ相対評価なんですよね。

必要最低点をみてみましょう

過去5年の必要最低点(総合)は以下のようになります。

109回 371点
110回 394点
111回 379点
112回 364点
113回 389点

最も高かったのは110回の394点、最も低かったのは112回の364点となります。

これは
110回は問題がカンタンだった
112回は問題が難しかった

ということです。どっちが良いか?どっちもいやですよね。

ただでさえ、たった二日間、360問の試験で「それぞれの実力を正確にはかる」ことは困難です。年をおうごとに歯科医師国家試験の品質は高くなっており、昔に比べると「意外な結果」は少なくなっていますが、それでもそれなりの頻度でそういったことが起こります。

そんなことが起こらないためには「適切な問題難易度」が必要です。できる限り多くの受験生が「納得できる結果」を得るためには、問題はカンタンすぎても難しすぎてもいけないのです。

結局は合格率

たまに「今回の国試問題は難しかった。まれにみる厳しい国家試験だった」みたいなコメントを国試後に出しているところがありますが、個人的にはちょっと謎です。

厳しい国試って「合格率が低い国試」ですよね。

相対評価をベースに考えると、問題の難易度だけで結果が厳しくなるとは言えません。ここ最近は(今のところ)全体合格率に大きな変化はありませんので、「年々国試が厳しくなっている」という表現は長期的にみれば確かにそうなんですが、中短期的にみるとそうでもないのかなと。専門教育を受けないと受験できない資格の合格率が6割台ですから「歯科国試が厳しい」のは確かですが、年ごとの変化はほぼ無いといえます。(ただし今後段階的にさらに合格率が低下する可能性はありますので、一年でも早くクリアする方がよいのは言うまでもありません)

「厳しい国家試験だったのかどうか」は合格発表の日に合格率が出るまではわかりません。

自分に有利な国試は?

ごめんなさい。結論からいうとなんともいえないです。

本番でどれだけ点数が取れるかは、全体的な問題の難易度だけでなく、問題の難化がどういう方向だったのか、受験生本人がこれまでどういった学習をしてきたのかなど様々な要因が絡みますので、一概にいえないというのが正直なところです。

ただ、あくまでも一般論ですが、問題難易度が高くなる場合、細かな知識が問われるケースよりも、思考型問題が増加するケースが多めなので

問題難易度が低い場合 → 正確に暗記しており、ケアレスミスが少ないタイプの受験生が有利
問題難易度が高い場合 → 暗記はそこそこだけど、思考力が高く解答にたどり着けるタイプの受験生が有利

となる傾向にあります。

いずれにせよ、確実な合格を手に入れようとしたら、暗記力と思考力はどちらも兼ね揃えなければいけませんので、問題難易度が高くても低くても対応できるようにしておきましょう。

国試当日、注意してほしいのは

国試当日、会場から出てくる受験生達の顔をみると、その年の問題難易度がおおよそわかります。

皆ニコニコ。口数も多い。まぁまぁいい感じかなって顔。

そんな年は「問題難易度が低い」ということ。ボーダーが上がる可能性があります。絶対に浮かれずに、ケアレスミスが無いか、十分な注意を払って解答してください。

皆がっくり。口数も少なく、会話していてもカラ元気な感じ。

そんな年は「問題難易度が高い」ということ。わからない問題が多くても、ムダに落ち込むことはせず、深呼吸して気持ちを整えましょう。大丈夫。皆できてないのだから、条件は一緒です。

というよりも、実はここまでの内容を理解している人にとっては、問題難易度がやや高いほうが有利なんです。歯科国試では当日のメンタルがものすごく大事で、心構えがあるかないかで点数は大きく上下します。

難しい問題が多く周りが動揺する中、自分の気持を何とかキープできれば、ライバルたちは勝手に崩れていってくれます。相対評価だからこそ、使える作戦。使わないのはもったいなさすぎます。

「問題の難易度は国試の厳しさと関係がない」ということ、今一度しっかりと胸に刻んでおいてくださいね。