「正しい暗記」が歯科国試の合否をわける
え、何いってんの?
今の国試は思考力でしょ?
そんな声が聞こえてきますが、絶対的な自信をもって「きちんと覚えること」をおすすめします。もしもこれまで暗記学習にきちんと取り組んで無いなら、信じられないほど大きな伸びしろになること間違いなし!!ぜひその強みを知っておいてくださいね。
そもそも歯科医師国家試験における思考力とは
歯科国試で求められる思考力というのは、何もないところから自分の頭だけで組み立てる能力でしょうか?ノーベル賞をねらうならオリジナリティは必要でしょうが、歯科国試に自分独自の思考って必要ですか?
違いますよね。
これまで明らかになってきた多くの知見があり、それを利用して与えられた情報を理解したり、論理的に組み立てて、有識者の方々と同じような結論に至る能力が歯科医師国家試験でいう思考力です。
つまり組み立てる材料(知識)をまず自分の中にきちんと揃えないことには結論には至りません。また組み立て方も自分勝手なやり方ではなく、それぞれの科目の筋道の立て方に沿うことが必要です。
思考力と暗記力、どちらも国試突破には必須
よくいう「これからの国試は思考力」というのは、思考力が必要な問題を増やしていこうというだけであって、暗記力で対応できる問題がなくなるわけではありません。
現在の4つの合格基準は以下のような問題構成になっています。
必修・領域A → すべて一般問題形式
領域B・領域C → 一般問題と臨床実地問題からなるが、配点は臨床実地問題がほとんど
問題にもよりますが、ざっくりいうと
一般問題形式 → 暗記力が必要
臨床実地問題 → 思考力が必要
ですので、まんべんなくバランスを整えて合格するためには、どちらも同じレベルまで引き上げなければなりません。
模擬試験の偏差値を確認してみてください。もし「必修・領域A」が「領域B・領域C」より低いのであれば、暗記対策を追加する必要があります。
考えてなんとかすることの危うさ
勘違いしている受験生が本当に多いので気をつけてほしいのですが、覚えるのがめんどうだから考えてなんとかするというのは思考力の正しい使い方ではありませんし、かなり危険です。
もちろん、国試本番ではどんな方法でも正解することが正義なので、結果的に「必死に考えて一問をもぎとった!」なら何の文句もありません。
でも準備段階からその前提でいるのはやめたほうが良いと思います。
試験中の時間ロスはばかにできない
考えてなんとかする受験生は多くの場合、一般問題で時間がかかってしまい、見直しが不十分になったり、最悪の場合は問題を解ききれなかったりします。しっかり暗記さえしていたら瞬殺できる問題は山ほどありますから、そこで時間を稼いで、思考型問題でじっくり考えるのが正しい戦略です。
模試で間に合っていても油断禁物。本番では誰もが一問あたりにかける時間は長くなります。気がついたら残り5分。まだ20問残ってる。こんな恐ろしい事故が起こりえるのです。
得点の不確実性も無視できない
また言うまでもなく、「考えてなんとかする」作戦はイチかバチかです。
その場でひらめかなかったら終わり。きちんと覚えておけば余裕で得点できたはずの問題をみすみす逃すのはもったいなさすぎます。
コツコツ暗記するのってスマートじゃない感じがしちゃうんですよね。考えてなんとかする方が頭が良いような、効率が良いような、そんな勘違いはよくあります。
このパターンにハマるのは思考力に自信のある国公立や私立中堅の学生さんが比較的多いのですが、結果として必修で惨敗ということになりがちです。せっかく思考力があるなら、暗記力もあわせもって、確実に合格してほしいなと心から思います。
必修対策にも暗記は必須
112回の必修問題をちょっと見てみましょうか。
解いてみる場合は、一問の制限時間は30秒でお願いします。
112A-1 健常者で尿中への排泄率が最も低いのはどれか。1つ選べ。
a 尿 素
b イヌリン
c クレアチニン
d D-グルコース
e パラアミノ馬尿酸
生命活動に必要なものは再吸収されること、D-グルコース=ブドウ糖ということを覚えていれば解けますね。【正解】D
112A-2 壊死性潰瘍性歯肉炎の臨床的特徴はどれか。1つ選べ。
a 歯槽骨の吸収
b 歯肉の線維性増生
c 付着歯肉幅の減少
d アタッチメントロス
e 辺縁歯肉の灰白色偽膜
壊死性潰瘍性歯肉炎の臨床的特徴を覚えていれば解けますね。あわせて歯肉炎と歯周炎の違いを覚えていれば自信を持って他の選択肢も消せます。【正解】E
112A-3 医療倫理の4原則で正しいのはどれか。1つ選べ。
a 研 鑽
b 自律尊重
c 信義誠実
d 使命の自覚
e 公益活動の実践
医療倫理の4原則(自律尊重、無危害、善行、正義)を覚えていれば解けますね。【正解】B
もう十分ですね。
きちんと覚えていれば確実に解ける問題ばかりです。
それどこで教えてるの?という問題もまれにありますが、除外問題になる可能性が圧倒的に高いので無視して大丈夫です。
また「このくらいの問題なら余裕で解けるから大丈夫」と思った方。
壊死性潰瘍性歯肉炎の典型的な臨床症状を他にいくつ言えますか?
医療倫理の4原則は全部完璧に言えますか?
正答率80%以上の問題で本当に取りこぼしはありませんか?
何回解いても100%正解できますか?
国試本番も、模擬試験も、必修問題で80%以上の問題を完璧に正解している人は全国でもごく少数です。
「カンタンなことを完璧に」すれば、国試は絶対に突破できます。基本事項の暗記や理解はしつこいくらいにしておきましょう。それが当日ものすごい最強の武器になりますから。
科目的にも配点が大きい衛生・外科は暗記系
定期試験と違い、歯科医師国家試験では科目により出題数が異なることは皆さんご存知だと思います。
どの科目がいっぱい出てるのか知りたかったら、過去問題集の厚さをみるのが一番です。
外科は分冊になるほど、また衛生の厚さも圧倒的ですね。次に小児や矯正が厚いことがわかると思います。
まず領域Aの攻めの要は衛生、領域Cの攻めの要は外科。この2科目は苦手であることは許されません。一方できちんと覚えるべきことを覚えれば90%以上の得点も十分可能な科目たちです。
衛生は法律や制度、各種データなど、正に暗記系科目の代表ですし、外科も取り扱う疾患が多岐に渡るためそれらの知識を大量に有していることが国家試験では求められます。
暗記が苦手な受験生にとっては辛いことかもしれませんが、時間をかけてきちんと取り組めば、それに比例して結果が出てくる暗記系科目の配点が大きいことは決して悪いことではありません。
きっちり努力して、がっちり大量得点をねらいましょう!
暗記の甘さは多浪にもつながる
「知っていたはずなのに解けなかった」
「最後の2つまでは絞れたけど、そこから正解を選べない」
こんな経験は誰もがしたことがあると思います。
特に不思議なことではなく、原因はただただ「ツメが甘い」ことにつきます。
何でもかんでも頭に詰め込めとは言いません。むしろマニアックなところは知らなくても良いんです。
ただ基本事項については「見れば思い出す」レベルではなく「何も見ずに書き出せる」レベルまで暗記精度をあげておいてください。
歯学部に6年間通っていたら、基本事項を「聞いたこともない」というのはありえません。
でも「聞いたことがある」つまり「見れば思い出す」レベルでは確実な合格はねらえません。 この違いがわからないと、自分では一生懸命やっているし、知らないことも無いはずなのに、何年経っても受からないということに陥りがちです。
浪人生も人によっていろいろですが、しっかり時間をかけて努力している人はたくさんいます。 ただ、残念ながら
・何でもかんでも詰め込もうとして、結果的に基本事項の学習が不十分になってる
・「聞いたことがある=すでに習熟している」という勘違いをしている
このどちらかが足かせになってしまっていることが本当に本当に多いです。
「自分もそういうハマり方かもしれない」と思ったら、ぜひ模試の全国成績で
- 「必修・領域A」の偏差値が「領域B・領域C」より極端に低くないか?
- 80%以上の正答率の問題を確実に得点できているか
この2点を確認してみてください。
残り時間が少ないときほど暗記学習は有効
ひとことで思考力といっても、そこには情報を抽出する力や課題解決のために情報を整理する力、さらに論理的に思考を組み立てる力などさまざまなものがあります。これらのトレーニングには「◯◯だけやれば良い」というものが存在せず、意識しながら学習を進めてもすぐに結果につながるものではありません。
つまり思考力は一朝一夕には身につかず、効果が現れる時期も不確実です。
もし本番までの時間が少なく、残りの課題は臨実のみというのであれば、思考力を上げることにとことん取り組むのが良いでしょう。ただ実際に成績をみてみると、衛生や外科などの暗記でまだまだ稼げそうというケースが往々にしてあります。
それに比べると暗記学習はすでに述べたように、やればやるだけ比例的に点につながるという大きな強みがあるので、残り時間が少ないときにはもってこいです。
大切な残り時間をどう使おうか迷ったら、ぜひ選択肢のひとつに入れてみてくださいね。
現場で受験生をみていると、あまりに暗記がおろそかになっていることが多いため、暗記学習の大切さと効果についてご紹介させていただきました。
ただ、戦略なしに何でもかんでも覚えればよいということでは決してありませんし、意味もわからず丸暗記するだけでは点はあがりません。暗記学習において大切なポイントはまた別の記事にあげさせていただきますね。