お子さんの勉強に口出しするのは禁物です
大切なお子さんの一生をかけた勝負。
親御さんであれば、何か力になりたいと思われるのは当然ですし、歯科医師国家試験の現在の状況を考えたらご家族のご協力は不可欠です。
また親御さんからみると、なんだかお子さんがのんびりしているように見えて、ついつい小言を言いたくなることもあるでしょう。
ただ、親御さんがお子さんの勉強に口を出してうまくいくケースはほとんどありません。
国家試験対策は結果がすべて。合格に結びつかないことや、場合によっては合格のじゃまになってしまうようなことは、一切避けましょう。
親御さんのアドバイスが裏目に出てしまうその理由
なぜ親御さんの口出しが功を奏さないのでしょう。その理由には以下のようなものがあります。
昔と今では国家試験がまったく違うから
親御さんが歯科医師の場合、自分も経験してきたことだから、成績をみながらあれこれ口を出してしまうことがあります。ただ、昔と今では別物と言っていいくらい国家試験は変わっています。昔はパワー勝負で何しろつめこんで合格することも十分可能でした。合格率が高い時代はよほどおかしなことをやらない限り合格できたのです。
ただ、今は資格試験としての精度もあがり、実力にムラがあったらまず受かりません。どこを切っても、低いところが一切無いような、バランスのよい仕上がりが求められます。また合格率が6割ちょっとということは、一点に集る人数も多く、わずかな点が運命を分けます。
これらの厳しい条件をクリアできるよう指導するには、全国的なデータをもとにした指導経験が必須です。
歯科医師としての能力と、歯科医師国家試験指導の能力はまったく違うのです。
一方的な命令は学習効果をあげない
無理やりやらされている勉強では、成績はなかなか上がりません。むしろ勉強嫌いが加速したり、実は本人もそれなりに深刻に考えている場合は精神的なストレスが飽和状態となり、うつなどに発展するケースもあります。
あまりに勉強していない場合、注意することは良いと思いますが、そのときも決して感情的にならないようにしてください。感情的な言葉を出した瞬間から、お子さんの頭は言葉の内容よりも「この時間をどうやって受け流すか」という思考でいっぱいになります。また注意も日常的に度々繰り返されると、言われることに慣れてしまい、注意そのものが意味をなさなくなります。
親御さんへのお願い
勉強に口出しするのとは逆に、はれものに触るように一切口出ししない、放置に近い状態になることも良いことではありません。
絶対に味方だということを伝える
ぜひお子さんに対して心から応援していることをポジティブな言葉で伝えてあげてください。(「期待している」とプレッシャーをかけるのはダメですよ)厳しい国家試験勉強の中で、何度もへこたれそうになりながら、それでも頭をぐっと上げて努力するためには、合格して喜ばせたい人がいることがとても大切です。
成績ではなく行動をほめる
また望ましい行動がみられたとき、例えば朝早く起きて自習室に行ったとき、毎日規則的に勉強しているとき、そういうときにはいっぱい褒めてあげてください。その行動が良いことだという認識をより強化することで、継続につながれば、おのずと結果はついてきます。
成績は上下しながら上がっていくのが一般的です。大きな伸びの前段階として一時的な低下がみられるのは珍しくありません。どんなにお子さんががんばっていても、下がるときは必ずあるのです。成績を褒めるということは「成績が下がったら評価しない」ということでもあります。これは無意識のプレッシャーになり、受験生に重くのしかかります。
しかし「勉強を継続すること」や「生活をきちんと整えること」は成績に比べればコントロールが可能です。疲れがたまっているときにも勉強したり、朝きちんと起きることはそう簡単ではありませんが、だからこそポジティブな応援が必須です。
定期的な家族会議は必要です
最後に。20歳をこえているとはいえ、学費を出してもらっている以上、受験生には学習の進捗状況、つまり成績を報告する義務はあります。定期的に話し合いの機会は設けてください。(ただし勉強のじゃまにならないよう、短時間ですませましょう)
その際、「なんでこんなに点数が低いの」と叱責するのではなく、この成績をどのように捉えていて、ここからどのように調整していくつもりなのか、本人の話をしっかりと聞いてあげてください。これは甘いようにみえて、実は「自分のことなのだから、自分でどうすべきか真剣に考えないとダメなんだよ」という教育です。そして、一方的に叱責された場合に比べて、自分で決めたことであれば意欲も上がりますし、しっかりと実行できる可能性は確実に上がります。
本人の分析や計画に疑問をもった場合は、そのことを率直に伝えましょう。例えば「夜遅くまで勉強するって言ってるけれど、逆に朝型に変えておいた方が良いんじゃない?」ただし、しつこいようですが、押しつけは禁止です。こちらから提案して、それでも本人が自分のやり方を主張するのであれば、それを信じてあげてください。また疑問が学習内容に関係するものの場合、例えば「補綴に力を入れるって計画だけど、保存系も心配」というようなものは「大学(予備校)の先生に一度相談しておいた方が良いんじゃない?」と専門家にふってください。
私もいやというほど失敗しました
ついつい口を出したくなってしまうお気持ち、とても良くわかります。
今となっては本当にはずかしいことですが、私も予備校講師をはじめたばかりの頃は、絶対に合格させたいあまりに、かなり高圧的に指導したことも正直あります。ただ、そういった指導は効果がうすく、結果につながらないことを散々経験しています。
また、どんなにやる気がみえない受験生でも「国試に合格したい」という思いだけは絶対に持っているのです。その本人の思いを、自分が前に出てひっぱるのではなく、後ろから後押ししてあげることが確実な合格につながっていきます。
良かれと思って親御さんがとった行動が、かえって受験生の足を引っ張るのは、あまりにも悲しいことです。
また親御さんも本当に大変ですが、やはり受験生本人が一番つらく苦しい思いをしています。どうか正しい方法で応援してあげてくださいね。