やる気って必要ですか?

医科歯科の洗礼

私は東京医科歯科大学出身です。医科歯科で良かったなと思うことはたくさんありますが、その中でももう天地がひっくり返るくらいの衝撃を受けた出来事がひとつあります。

定期試験前、私はいつものようにうだうだしてました。勉強しなくちゃいけない、でもやりたくない。あー、どうしたらやる気になるのかな。やる気がわかない自分に少しうんざりしつつ、まぁでも人間そういうもんだよねって思ってました。

同じクラスの友達も同じように思っているのかなぁと思って

「テスト近いけど、なかなかやる気にならないよね。あーあ、勉強したくないなー。」

と言った瞬間に、周囲の友人たちが一気に大爆笑

「何いってんの?だって結局やらなくちゃいけないのに、悩んでも仕方ないじゃん!!」

ええええええ!皆そうなの?普通、わかっててもやりたくなければ先送りにするんじゃないの?

これね、本当に本当に衝撃的だったんです。

皆、きっと「だよねー」「やりたくないよねー」って同意してくれると思ってたのに、、、。それは本当に私の人生を変える出来事でした。

やる気があれば勉強するという幻想

医科歯科の学生、誰もがそう考えていたわけではありません。ただ、そのように合理的に考える人は明らかに多かったように思います。

私はその出来事を経験するまでは「やる気と勉強時間は比例する」と思っていましたし、「やる気になりやすい人は強い」と思ってましたが、実は違うんです。

本当に強いのは「やる気があってもなくても、すべきことはきちんとする人」なんですよね。

人間だから、気持ちなんてどんどん変わります。そんな不確実なものに、自分の人生を委ねる事自体、かなり危ういことなんです。

医科歯科って一般的にはできる方にみられます。

実際、同窓生の中には、「もうレベルが違うな」って感服するような、群を抜いて才能にあふれた方もいます。

でも、全体的には「頭の回転がものすごく早い人」というよりも「現実的な割り切りがうまく、すぐに実行できる人」が圧倒的に多く、そういう人たちがきちんと結果を出しているように感じます。

やる気がなければパフォーマンスが上げられないのなら

私自身、学生時代は勉強に真面目に取り組んだとは全然言えませんので、上から目線で何かいうなんて恥ずかしいのですが、皆さんは1つ目のゴールである歯科医師国家試験で合格したら、実際の診療に従事することになります。

患者さんに対して「今日はやる気がないのでレベルが低い治療」を提供するつもりですか?

そんなわけないですよね。

プライベートで何かあって気持ちが最低なときも、体調が悪いときも、それによって治療の質が変わってよいはずがありません。対価をいただくのであれば、質を担保するのは当然の責務です。「仕事をする」ということを考えれば、「やる気」なんて不確かなものでパフォーマンスが変わることはあってはならないのです。

そこが意識的にコントロールしにくいことは重々承知しています。「学生気分が抜けない」のは学生なんだから、ある意味あたりまえです。

でもね、私が学生時代に受けた衝撃を少しでも感じてもらえたら、もしかしたら皆さんの人生も変わるかもしれません。

具体的には

まずは「やる気が出ないからやらない」はナシにしましょう。

勉強にはさまざまなタスクがあります。

例えば「苦手科目にじっくりと取り組むタスク」は、頭の疲れがまだ無い一日の始めが良いでしょう。もし、朝が苦手で朝から数時間経った時間帯が一番ノッているなら、その時間帯に入れ込みます。

逆に「正答率が高い問題をピックアップする」「ポイントをスマホのアルバムに整理する」など、頭はあまり使わないタスクなら、やる気がなくても十分にこなすことができます。こういった作業をきちんとこなしておけば、調子が良い時に「正答率が高い問題を解き直す」というような頭をしっかり使うタスクにすぐ取りかかれます。

何しろ毎日決まった時間のノルマをこなしていくことが大切です。

自分のためにも

「やる気の有無」に振り回される毎日って辛いです。

「追い込まれているのにやる気にならない自分は、どこかおかしいんじゃないか」そんなふうに自己嫌悪や人生への不安でいっぱいになってしまうこと、私自身も何度もありました。

だからこそ「やる気があれば勉強できる」という幻想はもうきっぱりと捨てましょう。

私もそうであったように、このきっかけで、皆さんの人生が少しでも良い方向に進みますように。