親御さんは受験生の生活サポートを
歯科国試対策では親御さんの行動がとても大切です。
特に「親御さんの間違った行動」は受験生の足を大きく引っ張ります。
「勉強のことに口出ししないでください」
そう親御さんにお願いすることが、これまで数え切れないほどありました。
何よりも大切な我が子の幸せと成功を願って、ついついいろいろと口出ししてしまう、そのお気持ちも痛いほどよくわかります。だからこそ、正しいサポートを心がけていただき、結果に結びつけてほしいと思います。
親御さんがサポートできること
歯科国試の合格に結びつく親御さんのサポート。
これはもう「生活のサポート」につきます。
受験生はとてつもなく大変です。
単に勉強だけすればよいわけではなく、将来への大きな不安によるストレスもあります。また、指導にあたる大学や予備校の先生方も、学習を継続できるようそれなりに危機感を煽るような話を繰り返し何度もします。それ自体は、必要なことでもあるのですが、受験生の性格もさまざまですので、繊細な人はそのたびにストレスをどんどん溜め込んでいきます。
私自身もいまだに国家試験の夢をみます。解答がわからず、次の問題に進んでもまたわからず、、、、。パニックになり泣きそうになりながら、「おかしいな、、、もう免許とったはずなのに」なんて不思議に思いながら、夜中にはっと目を覚まし、夢だったことにほっとします。
またそれなりに人生いろいろありましたが、これまでを振り返っていつが一番キツかったかというと、やはり歯学部6年生のあの一年が一番に思い浮かびます。
そんな大変なときだからこそ、勉強にできるだけ集中できるよう、親御さんには勉強以外のことをバックアップしていただきたいのです。
規則正しい生活のサポート
まず、受験生はある程度規則正しい生活が必要です。
当たり前過ぎて、ついつい見過ごされがちですが、生活がきちんとしている人とそうでない人では成績の違いは歴然としてあります。当たり前なのは「それだけ効果が大きいことを昔から多くの人が体験してきたからこそ」ですよね。
規則正しい生活はつかれそうなイメージがあるかもしれませんが、正反対です。一見自由気ままにみえても、不規則な生活こそが心身に大きな疲労を残していきます。
また人の一日の「判断に使える能力」には限界があります。
「今日は何時に寝よう」
「朝ごはんは何時にしよう」
こんな小さなことでさえ「判断能力の無駄遣い」です。
勉強そのものには様々な判断が必要となりますので、それ以外はできるだけルーティンにしていきましょう。
最も大切なのは起床時間。これを一定にするのが難しい場合には、お子さんと相談した上で手助けしてあげてください。
また自宅で一緒に住んでいる場合は、食事時間などもできるだけ毎日同じ時間にしておくのがおすすめです。
勉強時間の管理サポート
「勉強に口出ししないでください」というと、完全に放任になってしまうことも多いため、ここは正確にご理解ください。
勉強の「内容」に口出しは禁物です。
たとえば、模試の成績をみて「この科目があんまりできてないじゃない。もっとやらないといけないんじゃないの?」とうるさく言うのは意味がありません。国試対策では後回しにすべき科目もあります。
一方、あきらかに「勉強時間が足りてない」ことには、保護者として親御さんには口出しする権利がもちろんあります。
顔をみるたびに「勉強しろ勉強しろ」と口に出していくと、お子さんは無意識にその言葉を流すようになりますので、それはやめておきましょう。お子さんときちんと作戦を立て、毎日自宅で何時間くらいは勉強が必要ということを合意したうえで、それができているか確認し、あまりにできていない日が多いようなら今一度作戦会議を行いましょう。
家事のサポート
日々の生活の中で重要度が高いのは睡眠と食事です。
特に一人暮らしで自炊をしている場合、その負担が受験期には厳しいことがあります。(良い気分転換になることもあるので、本人と要ご相談です)
今はコンビニなどでも健康を意識したお弁当などもたくさんありますので、この一年だけは食費を上乗せしてあげるのも良いでしょう。レトルト食品や冷凍野菜などを送ってあげるのも良いと思います。
良質な睡眠と栄養で、勉強の底力を整えていきましょう。
経済的なサポート
ご家庭により事情はさまざまでしょうが、受験期だけはアルバイトを一切しなくても良いだけの生活費をどうか援助してあげてください。
言うまでもなく現在の国家試験は厳しいため、一般的にはアルバイトも定期的にしながらきちんと合格することはかなり難しいです。
この一年で終わらなければ、将来的な経済援助はさらに膨大なものとなりますので、どうか配慮してあげてほしいと思います。
何よりお願いしたいこと
勝手にサポートしない
「なにか手伝いたい」
そう思ったら、何しろ一度お子さん本人ときちんと話し合いを持ってください。
親御さんが一方的に介入し始めると、お子さんは当然戸惑いますし、せっかくの応援がじゃまなものにもなり得ます。
お子さんを一人の人間として、きちんと尊重しながら、押しつけの無いようお話をしてください。
また雑談程度でずるっとはじめてしまうより、時間と話すテーマを設定した上できちんと話し合い、スタートしたほうが成功率は高くなります。家族だとちょっと照れくさくて、そういった場を設けることに抵抗を感じるかもしれませんが、いつもと違う空気だからこそお子さんもしっかりと自分にとって何が必要なのか考えることとなるでしょう。
親御さん自身の不安をぶつけない
親御さんが抱えている不安も相当ありますよね。
お子さんを思う気持ちはもちろんのこと、経済的なことや体外的なこと、あれこれ気になってしまうのは当たり前だと思います。
でも、それを受験生にぶつけるのはどうかやめてください。
わざわざ受験情報を探して、この投稿にたどり着いた親御さんであれば、そんな行動は決して取らないと信じていますが、世間一般には「親御さんが自分の不安に耐えられずに、受験生にうるさく口を出す」ことがしばしばあります。
さらに「本当は自分の不安を解消したくて言っている」のに、自分でそのことに気づかず、「子どものためだから」と思い込み、際限なくお子さんを追い詰めていくことも残念ながら珍しくはありません。
いうまでもなく、その行動は、思い描く未来をどんどん遠ざけていきます。
親御さんだって人間ですから、不安はあっても良いのです。でもそれはどこか別の場所で解消していきましょう。ご友人や受験生以外のご家族に相談してみるのも良いでしょう。また基本的にはその不安は合格するその日まで根本的には消えないものですから、スポーツなどの趣味で紛らわせていくのもひとつの手段です。
いずれにせよ、必死にがんばっている受験生の負担を増やすようなことをしないよう、どうかお願いします。
大人?子ども?微妙な立場の受験生
ここまでご覧になって、中には「もう成人しているのに、ここまでやらないといけないのか?」と疑問に思った方もきっといらっしゃると思います。
もちろん、サポートをどこまでするのかは、対象となる受験生にもよりますし、ご家庭にもよります。親御さんのサポートがないと合格できないとは言いません。お子さんが自立心が強いタイプで、きちんと結果も出しているのなら、親御さんは「余計な介入をしない」ための我慢も必要になるでしょう。
ただ、毎年いろんな受験生をみていると、やはり「学生の考え方」というのは仕事をはじめないと完全には変わらないことを実感しています。これは甘えとかいうことではなく、誰でも「立場によって自覚も変わる」のは当たり前でしょう。
理想だけをいえば、受験生がみずから自覚し、きちんと生活を整えていくべきでしょう。実際にそうしている受験生もいないことはありません。ただ、理想だけを描いても、それが現実にならなければ仕方ありません。「いつか現実になるといいなぁ」なんてのんきなことも言っていられないですしね。
また他の医療系資格に比べて、段違いに厳しい歯科医師国家試験に取り組む一年ということを考えると、親御さんのサポートが過保護とは言えないように思います。
歯学部に入り、これまでずっと様々な応援をしてこられたと思います。受験生と同じく、ここが正念場。どうか本人が悔いなく精一杯がんばれるよう支えてあげてください。